「記事・論文」
産業の大地殻変動 (8月1日)
記事・論文 2010年8月6日
日本経済を支える2大産業である自動車産業と電機産業で大きな地殻変動が起きている。
これまでの自動車産業は完成車メーカーを頂点とし、多くの一次,二次の部品メーカーがこれを支えるピラミッド構造であった。今、この構造が自動車のモジュラー化で揺らいでいる。部品同士の相互接続の標準化を武器に、エンジン駆動など基幹部品メーカーが主導権も持ち出したのだ。その典型が独のボッシュだ。ドイツ車だけでなく、中国、インドの自動車メーカーにも組み込まれている。まさにパソコンにおけるインテルの戦略だ。
電機産業ではアップルの躍進が著しい。原材料、部品、組み立て、企画・マーケティングのサプライチェーンの中で、下流のセットメーカーが組み立ての中抜きをしながら、上流の部品の仕様をコントロールしようとしている。中国での組み立てを受け持つのは台湾企業のフォックスコーンだ。アップル以外にも、ノキア、HPなどグローバルな携帯電話、パソコンメーカーからも受託し、その規模55万人とも言われている。そのフォックスコーンも単なる組み立てから部品、部材メーカーに食指を伸ばそうとしている。ここに新たな垂直統合の流れが見て取れる。
2大産業で起こっている、グローバルな規模での垂直統合の崩壊と形成。いずれも中国をはじめとする新興国市場の台頭に対する戦略が繰り広げられているのだ。この大きな地殻変動において残念ながら日本企業はいずれも主要プレーヤーになれていない。さてこれからどういう戦略でグローバル競争に勝ち残るか。まさに今、正念場である。
菅内閣の地域成長戦略
菅新内閣が発足した。政治ドラマとは別に、政策の行方が気になるところだ。まずこの新内閣が取り組む仕事は、間近に迫った参議院選をにらんだ戦略だ。鳩山政権の下でのばらまき批判を意識して、前向きの成長戦略をうまくアピールしようとしている。この成長戦略は鳩山政権下で検討されてきたものではあるが、打ち出すタイミングが新内閣発足直後となるのは幸運だ。特に戦略特区構想は、積極論者の仙石国家戦略相が内閣の要の官房長官として実現させていくだろう。地方でも大阪、福岡、愛知などで期待が高まっている。
問題はその中身だ。本当に「戦略的」なものにするためには、そもそも県単位の発想から脱皮する必要がある。これまでの構造改革特区は自治体毎の細切れで、広域性が欠如していた。これでは国際的な視野での戦略性は出てこない。東アジアでの地域間競争を考えた単位で取り組まなければならない。具体的には、関西は大阪、神戸、京都の三都市、北部九州は福岡県、福岡市、北九州市、グレーターナゴヤは愛知、岐阜、三重の三県がそれぞれ一つの経済圏のプレーヤーとして「毛利の三本の矢」になれるかである。場合によっては、北部九州は大分、グレーターナゴヤは浜松、飯田も入るだろう。県単位ではなく、県境をこえた複数の市町村の連携が重要な構成要素になる。形式的な行政単位ではなく、経済実態を見据えた体制で取り組まなければ競争力につながらないことにそろそろ気が付くべきだろう。
ソーシャル・ビジネスを考える
今、ソーシャル・ビジネスに向かう若者が増えている。営利目的の企業と違った生きがいを探したい。かといって無報酬のボランティア活動では生活ができない。そこで社会性と事業性を併せ持つ世界に引き寄せられる。社会との関わり方も多様であってよい。政府も「新しい公共」の旗を掲げて支援を模索する。官の肥大化へのアンチテーゼでもある。地方では税収不足に悩む自治体が行政サービスの低下を補う役割も期待している。 » もっと読む
「違和感あるアジア内需論」に違和感あり
本日の日経新聞に標題のコラムが掲載されていた。筆者にご無礼かもしれないが、どうもアジア内需論の正しく理解のもとでのご批判のようには思えない。そこでアジア内需論の内容を確認しておきたい。
まず、正しくは「東アジア内需論」とすべきだろう。私自身、3年前から「東アジアは内需」と言ってきて、拙著「メガ・リージョンの攻防」にも書かせていただいた。
最近の東アジアでは所得水準の向上とともに » もっと読む
