細川昌彦 Masahiko Hosokawa

現在、中部大学 中部高等学術研究所 教授に就任しております。
大学とともに、グローバル企業、自治体などの顧問、アドバイザー、そして講演などもさせていただきながら、それを糧に転換期をむかえたこれからの地域、日本を考えていきたいと思いす。
今回の大震災の多くの犠牲者や被災者の方々に心よりお見舞いを申し上げます。

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  • 2012年03月31日 [ ブログ ]

    大都市型市民マラソンの目指すべき方向(東京マラソン、大阪マラソンに参加して)

     今や日本は大マラソンブームです。私自身、昨年の大阪マラソン、一昨年、今年の東京マラソンに参加しました。そして地元名古屋でもウィメンズ・マラソンが開催されました。参加者1万人以上のマラソン大会は全国で17にも上ります。どうしてここまでブームになったのでしょうか。

     

    もちろん国民の健康への関心の高まりもあるでしょうが、こういうマラソン・イベントを開催することによって地域にもたらされる効果を期待しているのです。それを考える上で、大事なのは、中小の地方都市における地域密着型のマラソンと東京、大阪などの国際的な大都市における大規模マラソンとでは目的・効果が違うということです。

    前者では、参加者、応援者含めた、地域のつながり、一体感の醸成が大事な目的となるでしょう。もちろん後者もこのような要素がないわけではありません。現に今年の東京マラソンの合言葉は「東京が一つになる日」でした。沿道の熱い応援などホスピタリティはやはり原点であることは私自身参加するたびに感動し、強く感じることです。毎回辛くても、また参加してしまう理由はそこにあります。

     

    そのうえで、さらに開催地域が重要視しているのが経済効果です。地域外から来るビジターが宿泊し、飲食し、遊ぶ。そのことによる消費支出です。国も観光客誘致の一環として「スポーツ観光」と称して、政策的に力を入れ出したのもそのことからです。その典型例がNYシティマラソンです。その経済効果は2億ドル以上と言われています。参加者3万7千人の50%は海外からで、平均滞在日数は6日間です。欧米のメジャーなマラソン大会では、マラソンの前後に音楽フェスティバルなど開催して、域外からの参加者をより長く滞在させる仕掛けを工夫しています。マラソンだけを考えるのではなく、まさに複合戦略です。

     

    そうした視点で見た時、日本の現状はまだ発展途上と言わざるを得ません。2007年からスタートした東京マラソンは確かに回を重ねるごとに充実してきました。これも関係者、ボランティアの方々のご努力の結果であり、正直頭が下がるものがあります。マラソン・レースそのものだけでなく、併設イベントも盛りだくさんになりました。参加受付の際の参加者をターゲットに開催するマラソンEXPO、沿道の盛り上げイベント、海外からの参加者へのおもてなしのためのフレンドシップ・イベントなどなど。その結果、外国人参加者も当初の2倍の2000人を越えています。しかし東京のグローバルな都市力を考えれば、まだまだ十分とは言えません。大阪も3万人のうち800人で、名古屋ウィメンズ・マラソンにいたっては、参加者1万5千人のうちの0.2%です。

     

    東京以外では、開催の経験もないゼロからのスタートですので、やむを得ないのですが、敢えて、今後の発展を期待して、気付きを言えば、前後の関連イベントもほとんどなく、海外も含めて地域外からの参加者に滞在して楽しもうと誘導する仕掛けに乏しいのが実態です。マラソンEXPOもスポーツ関連産業の一大展示会場というよりは、飲食出店が並ぶプレ・イベントのお祭りにとどまっているようです。「地元参加者にとっては満足度は高かったので、それでいいではないか」との声もあるでしょう。しかし地方都市ならば、ともかくも、大都市型市民マラソンにおいては、それだけでは十分とは言えません。やはり海外からの参加者をいかに増やすかを考えてほしいものです。大都市型市民マラソンの世界でも、「内向き」にならず、外に目を向ける必要があるのではないでしょうか。

     

     特に日本の4大都市圏では、ソウル、上海、シンガポールなど東アジアにおける都市間競争が激しく繰り広げられている中で、このような集客ビジネスでの争奪戦が行われているとの認識が大事です。東アジアに重点を置いた情報発信と集客、そしてアジアからの参加特別枠の設定などして、アジアからの参加者の多さでマラソン・イベントという商品の差別化戦略が必要になってきます。例えば、「アジアからの参加者数1割」を目標に掲げてはどうでしょうか。

     

    東アジアは経済発展とともに、所得の増えた中流階級、富裕層の海外旅行は急激に増えています。そして周遊観光を経験済みのリピーターも今後増えてくるでしょう。そうすると、周遊観光では飽き足らなくなって、体験型などの観光商品も有効になってくるのではないでしょうか。NYでは外国人のパッケージツアー参加者への特別枠を各国旅行会社に配分して、ツアーのPRも盛んに行われていることが参考になります。また格安航空会社(LCC)の急成長で、より手軽になり、アジアからのビジターも増えるでしょう。

     

    まだいずれの大都市でもスタートして間もない段階ですので、今後、地域外へ目を向けて発展し、特にアジアからの参加者が集う「アジア市民マラソンのメッカ」に育っていくことを期待したいものです。

     

  • 2012年03月09日 [ ブログ ]

    「13日」と福島原発事故

    福島原発事故の対策本部での議事概要が公表。議事未作成で、批判を受けて、やっと70ページの概要。米国では3000ページにも及ぶという。国民の知る権利の観点からのコメントはあるが、もっと大事なことがある。それは国家の重大危機における意思決定の在り方についての検証作業である。

     

     映画「13日」を思い出す。ケビン・コスナー扮するケネディ大統領がキューバ危機に直面して、ホワイトハウスでの閣僚たちとの会議で、どう対応するか、緊迫した中で議論が戦わされる。そうして意思決定する13日間のプロセスを描いているのだ。実は、その数年前に起こったピッグス湾事件での意思決定で失敗した教訓がその背景にあった。ピッグス湾事件ではCIAがリスクの過小評価をしたり、情報操作があって、意思決定が歪められたという。その反省に立って、ケネディ大統領は意思決定のプロセスを見直したことがキューバ危機で活かされたという。

     

    米国のビジネス・スクールでは、このケースを使って、組織のリーダーとして意思決定の在り方を学ばされる。

     

     

     重大危機における国家・組織の意思決定の在り方。その際のリーダーとしてのトレーニング。この重要なテーマに対する日米の違いを見せつけられた。

     

     

  • 2012年02月19日 [ ブログ ]

    自治体の企業誘致政策に見るいくつかの課題

     先日、愛知県・名古屋市合同の企業立地プロジェクトチームの会合がありました。私も愛知県政策顧問として出席。県、市それぞれから政策の取り組み状況の説明がありました。私が申し上げた意見のポイントは次のようなものでした。

     

    1県、市ともに産業空洞化に直面して、誘致のための助成策を強化しようとしていることは評価。問題は担い手の人材。

    誘致担当者が誘致した企業に対して誘致後も継続的に目配せし、相談相手になれるようなシステムにしているか、を質問してみました。自治体の職員が2,3年でコロコロ担当が交代するのではなかなか行政サービスも継続的なものにならない。自治体によっては、企業担当がずっと部署が変わっても付き合うシステムにしているところもある。残念ながら、当地では今後の課題であるようだ。

     

    2次に生活圏、経済圏での企業誘致政策の共有化です。

    名古屋市のようなダントツの中核都市では、市内でなくても近隣自治体に企業が立地しても、その取引先、従業員など市内にあって、経済効果が+になることが期待される。そこで、札幌市では、先進的な取り組みを行っている。市内への立地だけでなく、近隣地域への立地の場合でも、札幌市の助成がある(市内の場合の半分)。こういう生活圏、経済圏を共有する自治体とともに「同じ船に乗っている」システムを導入するようなことを今後、考えるべきだろう。ちなみに米国のある自治体では近隣地域とともに企業が立地したときの法人税収を配分している。

    今後、中核都市に求められる大事な役割であろう。